活動記事

2019年9月30日
令和元年度 第1回地域ITS研究会
日 時:令和元年9月30日(月) 14:00~16:45
場 所:北海道道民活動センター(かでる27) 520研修室

 

講演1
ナビタイムジャパンのMaaSに関する取り組みと今後の展開
森 雄大 様(株式会社ナビタイムジャパン MaaS事業部 部長)

ナビタイムジャパンのMaaSに関する取り組みと今後の展開について、ご講演をいただきました。講演の冒頭、経路探索エンジンの技術で世界の産業に奉仕するという経営理念のもと、世界中の人々が安心して移動できる社会の実現が会社の基本方針であるとご紹介いただきました。

ナビタイムジャパンのユーザーは、2018年9月時点で有料課金ユーザー数が約480万人、月間ユニークユーザー数が約5,100万人いて、あらゆる移動手段、移動シーンへの対応を目指しているということです。

講演ではMaaSレベル0(個別の移動手段の最適化)、MaaSレベル1(情報の統合)、MaaSレベル2(予約・支払いの統合)、MaaSレベル3(複合交通パスの考慮)、MaaSレベル4(社会全体目標の統合)について詳しいご説明とともに、各レベルにおけるナビタイムジャパンの取り組み・サービス・考え方などを具体的にご紹介いただきました。

さらにナビタイムジャパンのMaaSビジョンとして、オーバーツーリズムの問題、過疎地や高齢者の問題、域内の交通と体験を組合せた地域活性化、生活者の快適な暮らしと旅行者のすてきな観光の両立など日本型MaaSを目指していることをご説明いただきました。

質疑応答では、MaaS関連各社との関係性、ナビタイムマイレージの仕組み、災害時など突発時のナビゲーション、歩行者への案内(ナチュラルガイダンス)の工夫、鉄道の混雑情報の仕組み、銚子市での実証実験などについて質問があり、活発な議論が行われました。


講演の模様
講演2
道の駅「コスモール大樹」を拠点とした自動運転サービス
谷野 淳 様(北海道開発局 建設部 道路計画課 調査第4係 係長)

平成29年から取組んでいる道の駅「コスモール大樹」を拠点とした自動運転サービスについてご講演をいただきました。道の駅「コスモール大樹」での取組は「中山間地域における道の駅等を拠点とした自動運転サービス」に位置づけられ、中山間地域の特徴として、高齢化率が高いこと、車の運転ができない高齢者が急増していること、公共交通が衰退し買物や病院に行けないことなどについて具体的な数字をあげて現状を示した上で、中山間地域の集落における移動が危機的な現状にあることをご説明いただきました。

大樹での実証実験(平成29年12月10日~17日)では定員20名の小型バスを使って、レベル2(運転者が運転席に着座するが、車両が運転操作を実施)とレベル4(運転者が運転席に不在で、車両が運転操作を実施)を行い、①道路・交通、②地域環境、③コスト、④社会受容性、⑤地域への効果などを検証しているということです。

長期実証実験(令和元年5月18日~6月21日)では、町内の病院・福祉センター・団地などを循環する延長約4kmのルート、および生産空間である尾田地区と道の駅「コスモール大樹」を結ぶルートで自動運転の可能性を検証しています。この実験では乗車代金を徴収していますが、これは将来の実装を想定してビジネスモデルを検証するための試みということです。また、この実験にあわせて地域の中核都市である帯広市と大樹町を結ぶ「高速都市間快適バス」を試行運行して時間短縮効果などを検証しているということです。

将来像として、例えば南十勝でシミュレートすると、地域内で自動運転サービスが広がることでほとんどの地域が30分以内で移動することが可能になり、さらに地域内の自動運転サービスと都市間バスを組み合わせることでほとんどの地域が120分以内で中核都市に移動することが可能になるということで、将来の北海道の移動を支える技術・仕組み・サービスとして期待されます。

質疑応答では、雪道における自動運転(レベル2)の可能性と課題、自動運転を想定した道路構造や冬期道路環境のあり方、運賃設定の根拠、利用者の反応、今後の展開の見通しなどについて質問があり、活発な議論が行われました。


講演の模様
会員からの話題提供
自転車観光ポータルサイト「TABIRIN」について
栗栖 嵩 様
(パシフィックコンサルタンツ株式会社 社会イノベーション事業本部 交通政策部 技術主任)

パシフィックコンサルタンツが自社で取組んでいる自転車観光ポータルサイト「TABIRIN」について会員からの話題提供としてご紹介いただきました。

自転車観光ポータルサイトの背景として、自転車活用推進計画についてパシフィックコンサルタンツでは全国44都道府県で延べ500件以上の業務実績があることや、自転車部を有し、自転車ロードレースの国内プロレースや、ツール・ド・北海道国際大会、アマチュア世界選手権への出場経験を持つ登壇者(栗栖様)を含め、ビギナーからハイユーザーまでの多くの社員がいることなどがあって、「サイクリングコースに関する情報を全国のサイクリストに提供する仕組みを提供したい」という情熱が動機になっているとのことです。

TABIRINの名称は「旅×自転車」の意味を持たせたもので、全国のサイクリスト・観光客と全国の自治体が有するサイクリングコースなどの情報をマッチングさせて自転車で旅に出たくなるサイトを目指し、全国自治体等が公認のコース・マップ検索を核としつつ、①現地に行くための情報(サイクルトレイン・サイクルバスなど)、②現地で借りるための情報(シェアサイクル・レンタサイクルなど)、③休憩施設に関する情報(サイクルターミナル・サイクルステーションなど)、④サイクリストにやさしい宿泊に関する情報、⑤困った時のお助け情報(サイクルレスキューなど)などの周辺情報もあわせて掲載しているということです。

また、TABIRINは実際のサイクリングレポートや自転車に関わる声を届けることにもこだわっていてほぼ毎日記事を掲載しているということです。 今後の展開として、自転車関係のイベント・公共交通・自転車製品やパーツ・観光イベント・観光スポット・自転車保険・シェアサイクル・宿泊施設などの連携を視野に入れて多様な関係機関とサイクルツーリズムを盛り上げていくという力強いメッセージをいただきました。

質疑応答では、位置に応じたコース情報、ルート選定で重要な縦断勾配の情報、日常生活者向け情報などコンテンツに対する意見やTABIRINサイトのビジネスモデルなどについて質問があり、活発な議論が行われました。 


講演の模様