活動記事

2024年3月5日
令和5年度 第2回地域ITS研究会
日 時:令和6年3月5日(火)14時~17時
場 所:北海道開発技術センター4F会議室
(札幌市北区北11条西2丁目2番17号 セントラル札幌北ビル)およびオンライン(Zoom)

 

講演 1
北海道における持続的な物流の実現に向けた取組
経済産業省 北海道経済産業局 産業振興課 佐々木 悠太 様

北海道における持続的な物流の実現に向けた取組と題して、「物流の2024年問題への対応に向けた取組」と「フィジカルインターネットという高効率な物流環境の創出に向けた取組」についてご講演いただきました。

1つ目の「物流の2024年問題への対応に向けた取組」についてのご講演では、2024年度からトラック運転手への時間外労働上限規制などによってコロナ前に比べ最大14.2%(約4.0億トン)の輸送能力不足が懸念されており、物流事業者のみならず、発荷主・着荷主が積極的に取組める商慣習を作っていくことが重要とのことです。

特にトラックドライバーの荷待ち・荷役作業等の削減や物流効率化による積載率向上の取組が必要で、取組事例として、以下のご説明がありました。

  • バラ積みからパレット輸送への転換による荷役時間の削減
  • バース(荷下ろし場)の予約システムの導入による待ち時間削減
  • 共同輸配送による積載率向上の取組事例

2つ目の「フィジカルインターネットという高効率な物流環境の創出に向けた取組」についてのご講演では、次世代の物流システムとして、2010年頃からヨーロッパで提唱され、現在は国際的に研究が進められている、共同輸配送をどこでも、だれでも行うことができるようにする環境を構築する構想についてご説明いただきました。

具体的には、以下の3つの取組により、ネットワークで物流を支え、積載効率の最大化を図る構想とのことです。

  • デジタル化による物資や倉庫情報等の見える化
  • 規格化されたパレット・コンテナ等による混載可能な物資輸送
  • 複数事業者の倉庫・車両等のシェア

フィジカルインターネットの実現に向けては、経済産業省と国土交通省にて2040年までのロードマップの策定公表を行っている中、物流課題がより顕著である地域として挙げられている北海道において、地域レベルでのフィジカルインターネットの実現に向けた取組を進めているところであるとのことです。

質疑応答では、北海道特有の環境(長距離・季節・天候)に対する課題や、共同輸配送を行う場合の諸課題、鉄道輸送を含めたモーダルシフトに関する議論などが活発に行われました。


講演の模様 1

質疑応答
 
講演 2
吹雪の視界情報について
国立研究開発法人土木研究所 寒地土木研究所 雪氷チーム 國分 徹哉 様

「吹雪の視界情報について」と題してご講演をいただきました。北の道ナビ「吹雪の視界情報」は、主に一般ドライバー向けに開発された無料の情報提供サービスであり、吹雪による視界不良の発生予測情報(現況および24時間先まで)を提供するものです。視界情報は、北海道全域を221エリア(旧市町村)に分け、視界不良の程度を5段階に色分けしてマップ上に表示します。パソコン版・スマホ版のホームページで閲覧可能であるほか、視界不良が予測された際のメール配信サービスもあります。また、ユーザーが「北の道サポーター」となり、道路の吹雪情報をオンライン上に投稿することが出来る機能もあります。

ご講演では、「吹雪の視界情報」についての概要説明のほか、日々のアクセス数、ユーザーアンケートの結果、X(旧Twitter)による情報提供の効果等について紹介がありました。ユーザーアンケート(複数回答あり)によって、外出前に視界不良(200m以下)の発生が予測された際に、「外出や移動の出発を早めた、または遅らせた」ことのあるユーザーが約75%、「外出や移動を取りやめた」ことがあるユーザーが約55%、「移動のルートを変更した」ことがあるユーザーが約40%いることが分かり、「吹雪の視界情報」が、一般ドライバーの実際の行動変化に結びついていることが分かりました。また、Googleアナリティクスによる解析結果からわかるユーザー属性(使用ブラウザ、使用デバイス、アクセス地域等)の特徴についての報告がありました。

質疑応答では、Googleアナリティクスによる時系列的な解析、気象条件や地域性との関連についてのコメントや、災害発生時の運用に関する意見交換がなされ、活発な質疑応答が行われました。

 

北の道ナビ「吹雪の視界情報」
 

講演の模様

質疑応答
 
講演 3
室蘭MaaSプロジェクト「いってきマース」の取り組みほかについて
パナソニックITS株式会社 佐藤 慎吾 様

「室蘭MaaSプロジェクト『いってきマース』の取り組みほかについて」と題して、室蘭市で行われているMaaSプロジェクトについてご講演いただきました。

プロジェクトが始動したきっかけは、高齢者の交通死亡事故が連日報道されていたことを受け、「クルマの技術を通じて高齢者の交通支援に取組み、高齢者の交通事故を防ぎたい」という思いからでした。パナソニックITS㈱は車載器、クルマの中機器の開発を実施しており、そのモビリティ技術を活かした、社会貢献活動に取り組むことになったとのことです。

室蘭市においては、「最先端技術を活用した取組」や「新しいまちづくりの手法を活用した取組」によって、先進的なまちづくりを行っている地域を対象とした国土交通省のコンペにて、「室蘭グリーンエネルギータウン構想」が最高位となる審査員特別賞を受賞しました。よって室蘭市の構想とパナソニックITS㈱のプロジェクトの目的が合致したことから、室蘭市をフィールドとしたプロジェクトが開始されました。

室蘭市「いってきマース」プロジェクトで実現したい未来は、「その町の価値を高め、人々の生き方を変え、地域に根差した人材を育成する」ことであり、交通事業者や地元店舗などの事業者はもちろん、室蘭市に住む高齢者、さらには室蘭工業大学の学生も巻き込んだプロジェクトとなっています。

現在プロジェクトとして展開されている取組は高齢者等の買い物を支援する「いってきマース」、ゴミ収集に関する「収集しマース」、除雪の効率化を目的とする「除雪しマース」等があり、さらに"稼ぐ観光"へ貢献する取組として「駐車しマース」構想が検討されているとのことです。また、室蘭市で行われているこれらの取組が評価され、仁木町や洞爺湖町でも今後プロジェクトが展開されるとのことです。

質疑応答では、プロジェクトを通じたまちの価値向上に関するコメント、プロジェクトに参加している室蘭工業大学の学生からの意見について、都市OS等の今後の展開についてなどの意見交換がなされ、活発な質疑応答が行われました。


講演の模様

質疑応答