活動記事

2005年10月21日
平成16年度 第2回地域ITS研究会
日 時:平成17年1月28日(月)
場 所:(財)北海道道路管理技術センター 会議室

 

話題提供1
『車両位置情報活用による道路交通情報収集』について
宮腰 宗一 様
( 北海道総合通信局 電波管理部 企画調整課 課長補佐)

発表の様子

討議風景

北海道総合通信局様よりタクシー会社等が車輌の安全運行や効率的配車などを目的として、現在、業務用無線を活用し電送しているGPSの車両位置情報について、交通事故やイベントなどで発生する予期せぬ交通渋滞の確認等に利活用する方策を、お話し頂きました。

  • 北海道では、吹雪や路面凍結による、予期せぬ渋滞が発生する。現在使用されているセンサーの情報の他に道路交通情報を補完する情報があれば、情報の活用が期待される。
  • 道路交通情報の提供について、欧州ではビジネスとされ、日本ではITSとして国を挙げて各検討が行われている。
  • 道路交通情報を補完する情報として、既存のタクシー無線の活用の可能性を検討する研究会「所領位置情報活用による道路交通情報収集に関する調査検討会」を発足した。
  • 検討事項は次のとおり。  
  1. 業務用無線における電送情報の現状把握と、伝送における工夫について  
  2. 各事業者が保有する分散データの集積について  
  3. 集積したデータの活用の可能性について  など ・研究会の委員構成には、北大助教授 土橋氏を座長とし、開発局、北海道、札幌市、また、日本アイビーエムなどの無線機のメーカーや札幌通運などの交通機関など、民間の企業を加えた形で構成されている。
  • 第1回調査検討会(平成16年12月実施)では、次の検討が行われた。  
  1. タクシー無線におけるデータ伝送の現状等  
  2. MCA無線(運送会社で使用されているGPSつきの業務用無線)におけるデータ伝送の現状等
  • 車両位置情報活用による道路交通情報収集に関する調査検討会における検討は次の視点で行われた。  
  1. すでにある車両位置情報を細かな情報とするとなにかに利用できないか(タクシー無線は、プローブより情報の間隔が粗い)  
  2. プローブ情報を収集し、活用する検討が各所で行われている。タクシー無線のデータをここで利用しているデータに近づければ、利用の可能性があるのではないか
  • 情報を細かくする方法としては次の方法が考えられる。
  1. 情報伝送の間隔を狭める ・・・ 現実には難しい  
  2. 何台分かの情報の合成で細かくする ・・・ 検討の余地がある ・データの利用として、 インターネットでITSユーザへの情報提供などの可能性が考えられる。
  • 個別事業での用途を検討する必要がある。

(意見交換)
以下の意見交換がありました。

  • 集中基地局でデータを収集するが、収集したデータは各タクシー会社にデータを送るだけで、基地局内で全データを入手することは出来ない。
  • 都心内のタクシーが、動いている・停車している のデータを入手することは出来ない。
  • 各社のデータを入手するということは、各社立場から見ると、営業の内容が社外に漏れてしまうことにつながるため、 検討が必要となる。
  • 技術的には、GPSのシステムを新たに入れ替えるものではなく、現状改良で十分対応できると考えている。
  • 無線周波数帯の空きの問題やプローブデータフォーマットの統一などの技術的な検討には、現在はまだ至っていない。
  • ビジネスモデルとした場合の各タクシー会社のメリットとして、警察庁(H13)のまとめでは、情報開示によって、スムーズな配車などのビジネスチャンスにつなげることが出来るとされている。その他、各社のメリットは各社で検討している。
  • 利用者のためになるため、ひいては会社のためになるとする考え方もある。
  • 海外の事例として、ドイツでは、日本のJAFのような組織を大きくした組織があり、警察よりはやく、細かく状況を把握、提供しており、官に頼らず、会員が自分たちのためにデータを使っている。
  • 飛行機の予約では、さまざまな航空会社を取り混ぜて予約できるサービスがあるが、タクシーについても複数社で最も近い車両を配車することも検討できる。
話題提供2
『札幌市のカーシェアリング』について
須賀原 信広 様
(須賀原自動車工業株式会社 社長)

札幌市は全国三例目となる自動車を共同利用する"カーシェアリング"特区の申請を検討しています。これにより車の受け渡しが無人でもできるようになる"カーシェアリング"の普及について、お話し頂きました。

  • カーシェアリングとは、1台の車を複数のひとが共有する仕組み。誰も使用していないときであれば、会員は誰でも車を使用できる。(予め、使用したい日時を予約しておく)
  • カーシェアリングの普及による、車の絶対台数の削減、これによる環境汚染の改善、渋滞の解消、土地の有効利用を目指す。
  • 各家庭では、車の所有にかかるコストを削減できる。
  • カーシェアリングは、レンタカーではなく、あたかも自分の車のように、共有する車を利用する。
  • 車の年間走行キロ数が9,000km以下~あまり車に乗らない利用者がターゲット。
  • カーシェアリング入会前と入会後では、利用者の交通行動が変化する。車の利用数が減少し、公共交通の利用数が増加する。
  • カーシェアリングに入会すると、会員は、自動車使用を節約するようになる。
  • 車両絶対数の軽減による渋滞の緩和、駐車場不足の解消などの効果の中で、利用者は地域商店街に戻ってくることが期待でき、市街地商店街の活性化に寄与する。
  • 車両数、車両利用数の減少に伴い、温暖化ガス(CO2)の削減効果がある。
  • カーシェアリングは欧州が発祥。欧州では市場も増加している。
  • 世界最大はスイスのモビリティ。会員数58,000名、車の保有台数2,000台、駐車場980ステーションで稼働。
  • 成功している街は活性化している。
  • 会員間のつきあいが密なところが成功している。
  • CMなどはあまり行っていない。
  • 須賀原自動車は、札幌市白石エリアでカーシェアリングを実験。
  • 小規模集合住宅が多い、年齢層が均等、町内会組織が活発などの理由で選定。
  • システム概要は次の通り。  
    -利用者は、電話やインターネットで車の利用を予約する。  
    -予約した時間に、直接、車両ステーション(駐車場)まで車を取りに行く。ユーザー認証はICで行っている。  
    -車を利用し、仕事や買い物などの用事を済ます。  
    -利用が終わると、元の車両ステーションに車を返す。(ラウンドトリップ)
  • 実験前は独身の学生の利用が多いと予想していたが、実際には家族持ちの課程のセカンドカーとしての利用が多い。(実験会員の9割は車を保有している)
  • 白石の実験では、1回の利用に2時間以内とした。
  • 1ステーションでカバーできる範囲は、歩いて5分(約350m)の範囲。これは、コンビニの設置間隔。
  • 白石地区のステーションは現在2ステーションで稼働している。
  • 問題点としては、鍵の返却に関するトラブルや、貸し渡し証・返却証の排出ミスなどのトラブルがある。
  • ステーションの除雪は現在、社員・会員の協力で、人力で行っている。
  • 次の実験は琴似を予定。今後は中央区で実施したいと考えている。
  • 実運用時の料金としては、会費、利用料金の他、夜間料金やCO2料金などを考えている。
  • CO2料金(CO2メータを取付、算定)とは、走行距離による料金のことだが、CO2料金と命名することにより、環境への影響をアピールしている。
  • 日本の個人の年間平均走行距離は約5,400kmと言われており、現在検討中の料金体系と自家用車保有の場合の料金比較を行うと、次のようになる。  
    -検討中の料金体系の場合 28,675円 (年間総費用)  
    -自家用車保有の場合     80,000円 (年間維持費) 

(意見交換)
以下の意見交換がありました。

  • 「CO2料金」の命名がよい。環境をアピールすることは重要。
  • 発祥地の欧州では環境はアピールされていない。
  • 費用(料金)は、燃費から逆算で算出。その他、過去の事故や所有している車の走行キロなどを加味。
  • 須賀原自動車では、事故の数や走行キロなどについて、車両保有からカーシェアリングに切り替えた場合、どうなるか、データを札幌市に提出したい。
  • ビジネス採算性をあわせるには、1台に月、30~40名の会員が必要。キャッシュフローは3~4年を目安と考えている。(ターニングポイントは、70~80ステーション、会員数200名が目処といわれている)
  • 会員の募集方法については、大学やマンションと提携した法人計画を実施しているところもあるが、ほとんどは足で人を集めている。
  • 大学のアパートは住人の募集で競い合っており、「インターネットを使える」というだけで差別化が図られている。カーシェアリングの会員の募集の可能性として、これと同様に、「カーシェアリングを使える」とする特典を付けることや、学割などを検討できる。また、アパートの駐車場をステーションとして活用できる利点もある。
  • 実験では、「使いたいときに車がない」などのトラブルは現在見受けられない。会員は、自分のスケジュールにあわせて車を使用するのではなく、逆に、車のあきにあわせて、スケジュールを組んでいる。
  • 返却時間については、渋滞がひどい場合など、どうしても遅れそうな場合は電話連絡で確認を取っている。カーシェアリングが実運用されている欧米でも、返却時間に関するトラブルはないとされている。これは、レンタカーではなく、マイカーを利用している、あとのひとに迷惑が掛かる、とする意識が強いため。
  • レンタカーとカーシェアリングはTPOによって、使い分けている。(遠乗り=レンタカー、近場の移動=カーシェアリング)
  • 実験では、2時間までの予約を可能としているが、実際には2時間の予約を行う会員は少ない。30分で用事が済む場合は、30分しか予約を入れない。みんなの車であり、余計な時間の予約を取ると、みんなが迷惑する、とする意識があるため。
  • マイカーは、かってしまえば、使わなければ損になる。カーシェアリングでは、使うと損になる。
  • 白石の実験は、社会実験として、無料で実施。3/1より有料化。会員の半数が残って核になってくれればいい。