活動記事

2015年6月17日
平成27年度 北海道ITS推進フォーラム講演会
日 時:平成27年6月17日(月)
場 所:札幌市教育文化会館 講堂

 

講演
データオリエンテッドな都市・地域・交通計画
有村 幹治 様
(室蘭工業大学大学院工学研究科  准教授)

ご講演では、近年、都市・地域・交通計画に活用可能なプローブデータ、ICカードデータ、SNS上の口コミ、GISデータなどが大量に流通していることを背景として、データそのものを中核に据えた「データオリエンテッドな計画・マネジメント手法」について、具体的な事例を交えてご講演いただきました。  

具体的な事例の一つ目として、プローブパーソンによる大規模避難訓練の観測と評価として「室蘭シェイクアウト」の事例をご紹介いただきました。  

この避難訓練は平成26年9月1日に室蘭市輪西地区で実施したもので、避難者のGPSデータとアンケート調査を比較した結果、本人が想定していた避難時間より実避難時間は約5分程度多く要していることが明らかになりました。緊急時の5分はとても生死に関わる場合もあり、訓練によってこの差を意識できたことは大きな成果のひとつと言えます。  

また津波避難シミュレーションで、住民が避難の声掛けをして「反応したケース」と「反応しなかったケース」を15分で比較すると、前者は約8割が避難完了するのに対して、後者は約2割しか避難が完了しない結果となり、住民の声掛けに反応することの大切さ、すなわち日頃からの信頼感の醸成や共助意識の重要性が示唆されました。  

事例の二つ目として、都市計画基礎調査データとモバイル空間統計(NTTドコモ)を用いた帯広都市圏メッシュ人口の推計についてご紹介いただきました。  

わが国が直面している少子高齢化による人口減少社会に対して、人口構造に応じた都市の戦略的に集約する「コンパクトシティ施策」が重要となります。  

この施策を具体的に展開するアプローチとして、モバイル空間統計データと都市計画基礎調査データを用いて時間帯別のメッシュ人口や建物の老朽化など、帯広圏の現状や特性を定量化および可視化した事例から、これまでの技術では見えなかった都市の実態をご紹介いただきました。  

講演後の質疑応答では、北海道の地方都市におけるコンパクトシティのあり方に関する質問、室蘭で実施した避難訓練の今後の展開に関する質問、帯広のPT調査との比較に関する質問などがあり、活発な意見交換が行われました。


講演の模様