活動記事

2017年9月13日
平成29年度 第1回地域ITS研究会
日 時:平成29年9月13日(水) 14:00~17:00
場 所:NCO札幌(旧ビル名:NSSニューステージ札幌) 5F会議室

 

講演1
土木学会によるITS研究の現状と課題 ~北海道から考える~
清水 哲夫 様
(首都大学東京 都市環境学部 自然・文化ツーリズムコース教授 国際センター 国際交流部門長 地域共創科学研究センター 副センター長)

土木学会におけるITS研究の取り組み状況について、これまでの経緯と浮かび上がってきた課題、そして昨年度発足した「ITSとインフラ・地域・まちづくり研究小委員会」のねらいと、北海道の地域ITSに期待したい役割について、ビックデータを用いた研究事例を交えながら、ご紹介いただきました。

土木学会では、1999年から「交通事故分析」と「道路利用の情報化・効率化」をテーマとしてITSの研究小委員会が発足し研究が進められてきました。その後、社会ニーズに寄り添いつつ、道路システム自体を抜本的に改善するようなITSを目指し、2004年から実践的ITS研究が始まり、10年余りに渡って活動を続けてきました。 そして2016年からは、全国の土木計画学研究者ネットワークを活用し、地域における「少子高齢化・人口減少」、「地方創生」、「観光振興」、「まちづくり」、「コミュニティー形成」、「インフラ維持管理」といった分野でのITSへのニーズを広範に把握し、国内外の従来の地域ITSの成果と課題を分析して実践に向けた事業化手法を提案する「ITSとインフラ・地域・まちづくり研究小委員会」を発足しました。

北海道では、北海道大学の岸准教授のもとで、主に「観光振興」、「除雪」、「農業物流」をテーマに実践研究が進められているとのことです。 北海道は、日本社会が抱える諸課題のフロンティアとしての貪欲で斬新なアイデア出しと、その実験舞台としての機能を期待しており、自然・地理条件の厳しさやメリットを生かした研究開発によって、全国展開可能な研究を期待しているとのことです。

また、講演ではビックデータ等を活用した研究事例についてもご紹介頂きました。ビックデータを活用した分析は、「何を知りたいのか」を明らかにすることが重要であること、知りたいことに見合ったデータを扱う必要があること、的確な仮説のもとで分析を行う必要があること、等に留意することがあるとのことです。

質疑応答では、メリハリの効いた規制速度を国内で導入する上での課題、時間の関係で講演の中でご紹介いただけなかったパリA86の小型断面トンネルと混雑料金による交通管理の事例の紹介等がありました。


講演の模様
講演2
ICTを活用した社会インフラリスク検知技術
鈴木 貴志 様
(株式会社 富士通研究所 応用研究センター ソーシャルイノベーション研究所
シニアイノベマネージャー)

富士通研究所が開発した洪水予測シミュレーションのパラメータ値を自動決定する技術、および、下水道氾濫検知システムについてご紹介頂きました。

河川管理業務において、河川の流量を予測するために洪水予測シミュレーションが運用されています。シミュレーションでは、流域の状態をきめ細かく反映するため地形や、森林や市街地といった土地利用の分布をモデル化した「分布型流出モデル」の利用が望まれていますが、予測の精度を高めるための最適なパラメータの決定の難しさが課題でした。 富士通研究所と土木研究所では、分布型流出モデルにおけるパラメータを、最適化アルゴリズムの選定と適用により、自動決定する技術を開発しました。これにより、分布型流出モデルに基づく洪水予測シミュレーションを最適な設定に調整して運用することができ、予測した河川の流量によって、河川管理者が防災、減災のための対策を適切に判断できるようになるとのことです。

また、近年多発するゲリラ豪雨に伴う下水道氾濫の検知ソリューションについてもご紹介頂きました。水位情報を収集するセンサーを下水道のマンホールに設置し、無線通信で水位情報をクラウド上に収集します。水位情報を収集するセンサーには、温度差より得られるエネルギーを電力に変換する熱電変換ユニットから電力を供給します。実証実験ではバッテリーのみでセンサーを駆動する方式と比較すると、電池交換周期が10カ月から5年に延長できることを検証し、運用コストの抑制が期待されるとのことです。

さらに、AIを活用した下水道管渠内水位の予測手法の開発についてもご紹介頂きました。従来の流出解析は説明性が高いものの、解析に時間を要する、モデルの更新等が困難であるとのデメリットがあります。AIによる予測では、説明性は低いものの、解析時間の高速化が図られ、学習を積み重ねれば精度も高くなるとのことです。


講演の模様
会員からの話題提供
AI×IoTを活用したヒヤリハットの見える化で事故を削減
入澤 拓也 様 (エコモット株式会社 代表取締役)

エコモット株式会社は、融雪装置遠隔制御サービスを行う企業として2007年に創業した札幌に本社をおく企業です。現在は、『あなたの「見える」を、みんなの安心に。』をスローガンに、ワイヤレスセンシングとクラウドアプリケーションを活用したIoTインテグレーション事業に注力しているとのことです。講演では、交通事故削減ソリューション「Pdrive」について、その概要と活用事例についてご紹介いただきました。

「Pdrive」は、通信機能を有するドライブレコーダーであり、インターネット上で、リアルタイムで運行状況を把握できるものです。複数台の車両の所在や状態の遠隔監視する運行管理や、Gセンサのデータに基づくヒヤリハット発生状況把握による安全運転指導などへ活用できるとのことです。

また、高精細な動画を取得できることから、Gセンサ情報と合わせることで道路のひび割れ検知などへの活用も可能であること、ウェラブル端末で得られる生体情報と車両挙動によるドライバーへの注意喚起にも今後取り組んでいきたいとのことでした。

質疑応答では、ドライブレコーダーで得られた情報の2次利用や、道路のひび割れ検知方法について等、活発な質疑応答がありました。 

北海道開発局 i-Snow


講演の模様

参考:会員からの話題提供について 北海道ITS推進フォーラムの会員間の情報共有や意見交換をより進めることを目的として、ITS、ICT技術による課題解消や魅力創出の取組みなどを会員から話題提供していただく試みです。今回、エコモット株式会社から応募があり、地域ITS研究会にて話題提供をいただきました。