活動記事
自動運転は、実は1960年代から開発が始まった技術である。当時はセンサやコンピュータの性能が低いこともあって、高速道路のように比較的単純な道路環境のなかでハードインフラに依存した自動運転であった。
近年、自動運転が注目をされるようになったのは、一般道で一般ユーザが使えるというインパクトが大きい。また近年の技術的特徴として、高性能なセンサが手軽に入手可能になったことや、コンピュータの処理能力の飛躍的向上、人口知能(AI)、高精度地図の活用など、ソフトインフラを活用した自動運転へとシフトしている。 車、古くは馬車は、人間がコントロールする乗り物であるが、自動運転自動車は人間がコントロールしない乗り物であり、概念が全く異なることから、今後のまちづくりにも大きな変化をもたらす可能性がある。
金沢大学の自立型自動運転車両には、ミリ波レーダ、ライダー、カラーカメラ、車速センサ、GPSなどセンサを二十数個搭載されている。各センサは特有の役割を担っており、例えばカメラは信号の青赤黄の色識別ができる唯一のセンサであり、ライダーは走行空間の三次元認識ができる唯一のセンサである。 これらのセンサから得られる情報から周辺環境を認識し、数秒先を予測し、走行軌跡を導いて自動運転を実現している。
石川県珠洲市で行った公道実証実験(2015年2月)では、様々な技術的課題に対応しながら最終的には約60kmのルートで実験を行った。実道実験では、色々なシチュエーションがあった。ひとつの事例として、青信号で右折する時、信号無視の自転車の横断、見通しの悪いカーブからの対向車の出現、その直後の信号現示の変化があったが、これら全てを同時判断して問題なく走行できた。
現時点の技術的問題点は、①センサ種別・レイアウト・検出範囲、②人間(歩行者、工事誘導員、交通整理員等)のジェスチャー認識、③気象条件(大雨・濃霧・降雪)、④緊急車両対応などが挙げられる。
質疑応答では、自動運転自動車の積雪寒冷地における課題、地域間を結ぶ自動運転車の専用道路の必要性、自動運転側から見た時に必要な道路交通法や道路構造令、日米欧における技術開発の最前線の状況、自動運転がもたらす観光への波及など、活発な質疑応答が行われた。