活動記事
「データ流通社会の構築と社会基盤の相補性」と題して、社会経済データを利用シーン毎に完結させずに還流させることで付加価値化していくことの重要性について、最新の研究事例を交えながら、ご講演いただきました。
近年、IoTの進展にともないハードウェアやセンサなどから得られる社会経済データの利活用の制度基盤が整備されつつあることがご報告されました。 まず、様々な社会経済データを活用した研究事例として、はじめに、帯広市の都市計画基礎調査の建物建築年のデータを活用した建物の生存確率の推定や街のリノベーション計画への適用可能性に関する研究、次いでモバイル空間統計データやWi-Fiパケットセンサーを活用した滞在人口、周遊行動分析に関する知見とその活用の可能性についてご紹介いただきました。
さらに、室蘭市をフィールドとして、地域の人口情報、道路のネットワークデータ・交通量、公共施設データ(道路の損傷状況や上下水管路など)、産業情報など様々なデータを結び付けて、各インフラのネットワーク価値を分析・評価し、施策の意思決定を支援する「パブリック・アセット・シミュレータ」の開発についてお話しをいただきました。このシミュレータを用いることで、市民ニーズに応じた総資産のあり方を診断・分析することが可能となるとのことです。
また、広域分散型社会における新たな道路交通施策として南十勝で実施された、「道の駅での自動運転と都市間高速バスの接続実証実験」についてご紹介いただきました。ご紹介の中では、道の駅を拠点とした広域交通網の形成や、MaaS(Mobility as a Service)によるサービスの向上、自動運転によるコストダウンが課題としてあげられ、中でもMaaSを地方部で構築できるかが今後重要になることをご示唆いただき、フィンランド・ヘルシンキでの「Whim」の具体的な事例を交え、大変興味深いお話しをいただきました。
質疑応答では、モバイル空間統計データを始めとする各種データの特性についての質問や自動運転のコストに関する質問があり、活発な意見交換が行われました。
全体を通じ、具体的かつ先進的な研究事例をもとに、データ流通社会と社会基盤整備や交通施策との関連についてご教示いただき大変有意義なご講演となりました。