活動記事
「自動運転に対応した道路空間」と題して、自動運転時代の道路空間の考え方や自動運転がもたらす将来について、実証実験の事例を交えながらご講演をいただきました。
道の駅を拠点とした自動運転の実証実験として、秋田県の道の駅「かみこあに」での取組みについてご報告がありました。
この取組みは、道路に埋設する誘導線を用いたゴルフカート型の自動運転車の実証実験で、平成29年からスタートし令和元年11月には日本で初めて実運用がスタートしているとのことです。
実運用が可能となったポイントとして、①対象地域が道の駅を核としたコンパクトな生活圏となっていること、②高齢化率が高く積雪寒冷地であることから、移動を容易にしてほしいという地域ニーズが高いこと、③新しい交通手段としての自動運転車への理解が得られたことが報告されました。
今後は、地域の中で"自動運転をいかに通常の乗り物としていくか"という観点が必要で、長期的な視点での利用機会の増加や、地域と一緒に自動運転システムを作り上げることが重要であるとのことです。
さらに、令和元年7月から令和2年6月まで実施された「自動運転に対応した道路空間に関する検討会」での検討事項について、以下の3つの視点でご紹介いただきました。
①限定地域における自動運転移動サービス
道の駅「かみあみこ」での取組のように、各地で実施される実証実験を踏まえた知見の獲得が必要であるとともに、自動運転専用空間の確保やインフラ側からの支援、地域住民との連携の重要性についてお話いただきました。
②高速道路におけるトラック隊列走行システム
商業化を目標に取組みを継続されること、ランプ合流部における錯綜をいかに円滑に支援するかが課題になることが示されました。
③自家用車の高速道路自動運転
操縦の主体が自動車となるレベル3自動運転については、自動車が自動運転を解除した場合のドライバの反応には難しい局面があることから、今後の展開のシナリオについて継続して議論がなされていくことが紹介されました。
最後に、将来的に自動運転時代の道路空間が実現され、自動運転車両が100%になることで、車線幅員を狭くし車線数を増やすことができること、また車間距離を短くすることができることで、渋滞や交通事故などの多くの交通問題を解決できると考えられる。
ただし一瞬にして自動運転車両が100%になることはないことから、過渡期においては、いかに安全・円滑な道路空間を創出するかが重要であることについてお話いただきました。
具体的には自動運転車のレベル0から5まで定義されているのと同じように、道路に対しても自動運転への対応レベルを設定することや、ネットワークとしての階層化を設定していくことが今後重要であることが示されました。
質疑応答では、自家用車両の自動運転レベル3の展開に関する意見や、地域での自動運転サービスを持続的に提供していくための取組に関する意見、MaaSなどのサービスを視野に入れた公共交通の階層化との連携など、今後の自動運転の取組に向けた活発な意見交換が行われました。
全体を通じ、自動運転時代に向けた道路空間のあり方について、ご教示いただき大変有意義なご講演となりました。