活動記事

2021年9月27日
令和3年度 第1回地域ITS研究会
日 時:令和3年9月27日(月) 14:00~17:00
場 所:オンライン開催(ZOOMによる配信)

 

講演1
画像・映像データとAI車両の意味理解
-次世代の道路・交通管理の実現に向けて-
高橋 翔 様(北海道大学 大学院工学研究院 先端モビリティ工学研究室 准教授)

高橋先生は、画像・映像データの意味理解とAI活用などの情報科学・データサイエンスがご専門で、近年は交通工学分野において、「情報の集積・分析・制御」に関する社会基盤マネジメントの支援技術の構築に向け、次世代の道路・交通管理に関わる研究を進めています。

これまでの研究から、まず、選手の動きの追跡・予測を行うスポーツ映像解析の技術についてご紹介いただきました。これは、交通工学の分野において、人や車両の移動に関する情報の集積・分析・予測に活用できるものとのことです。

現状の道路空間では、人間社会の一部として、ヒトがお互いに「空気」を読むことによって、安心して利用できる空間となっている。

一方、自動運転車両は、自動車自身がAI等を活用し挙動を判断する。人間社会の一部として構築されたヒト用の道路空間において、キカイ(自動運転車両)が適合可能か、ヒトが「キカイの空気」を読めることができるかが今後の大きな課題である。

また、冬期間の道路状況を昼夜問わずセンシングする道路空間のリアルタイムデジタルツインの研究、自転車の走行挙動をリアルタイムでAI分析し危険な挙動を検出する技術、VR空間上で右折時の運転挙動をドライバー視点および俯瞰で把握し安全性を評価する技術、歩行者を検出し挙動を予測する技術、そして道路移動時の視認を妨げないAR技術などの研究開発を進めている。これらは、ヒトが違和感を抱かない自動運転、冬期の自動運転の実現につながるものと考えている。

質疑応答では、冬期の自動運転技術開発の進捗状況、歩行者の挙動予測、交差点右折時のドライバーの視認状況の計測方法、視界不良時の先方視界の明瞭化は可能かなどの質問があり、活発な議論がなされました。


講演の模様(配信会場)

講演の模様(オンライン画面)
 
講演2
更別村のスーパーシティ構想に関する概要紹介
西山 猛 様(更別村 村長)

人口減少、少子高齢化という状況の中でICTやIoT、AIを活用、推進していくスーパーシティ構想に対する更別村の取組概要について、ご講演いただきました。

農業が基幹産業である更別村では、広大な土地を生かした大規模農業を展開しているが、農家戸数は減少傾向で、危機感を覚えているとのことでした。それに対し、国家戦略特区の指定申請や近未来技術実装事業などの取組を進めてきた中で、スーパーシティ構想が出てきた。人口減少、少子高齢化の中にあって、農業分野、1次産業分野ではなく、まち全体の色々な課題を先進技術によって解決していこうということで、更別村でも国に申請を行ったと紹介がありました。

実際の取組として、高齢者が一番困っているという状況で、高度技術や通信網を使ってこれを解決することを目指し、何が不足して何をすれば持続可能な豊かな村を継続できるのか、高齢化、人口減少に悩む他の自治体にとっても光となる取り組みとしたいとのご説明がありました。

また、「100歳となってもワクワク働けてしまう奇跡の農村」をスローガンに、これまで取り組んできたスマート農業を核に、最新の農業研究と官民が一体となって取組を推進する。「ヒトモノ移動」「いつでも診療所」「世界No1生体認証」の3つの取組が中心で、これら技術の輸出を目指している。ただし、取組を進めるには様々な規制が存在し、それらを克服しなくてはいけないとのご説明がありました。

まとめとして、スーパーシティ構想に申請している31の地方公共団体のうち、更別村を含む多くがブラウンフィールド(既存の都市を改革する)という形であり、同じ課題を抱える全国の皆さんの希望の光になれるように、先端技術を活用しながら村の課題を解決していきたいとのことでした。

質疑応答では、近隣市町村との連携や村内住民への課題の理解等に向けた取組などについての質問があり、活発な議論がなされました 。


講演の模様(配信会場)

講演の模様(オンライン画面)
 
講演3
厚真町発モビリティインフラ「Mobility meets Community」の取組について
成田 智哉 様(ミーツ株式会社 代表取締役)

厚真町発の"移動を出会いの場に"というコンセプトのモビリティインフラ「Mobility meets Community」の取組みについて、ご講演頂きました。

厚真町のようなタクシーが町に1台しかないという過疎地のモビリティーサービスとして、移動したい「ユーザー」と協力できる「パートナー」をマッチングする取組み。

マッチングパタンは、ベテランと若者、移住者と地元の家族、観光客と地元のオヤジなど様々とのこと。

有人運転である車の中は、出会いの場所になることに着目し、モビリティを単なる「移動サービス」とせず、「地域コミュニティの活性化に繋げるサービス」とするため、付帯サービスとして、契約店舗の割引や買い物代行等や、イベントの開催などにも力を入れているとのこと。

これらのサービスにより、①免許のスムーズな返納をサポート、②町民同士の共助・互助の実現、③有料サービスとして持続可能なサービスを実現という、これからの過疎地に必要なモビリティを目指されているという取組みをご紹介頂きました。

質疑応答では、利用料金やビジネスモデル、マッチングのツール、上手くマッチングできなかった時の対応方法、横展開に向けた時間軸の考え等についての質問があり、活発な議論がなされました。


講演の模様(オンライン画面)