活動記事

2022年10月14日
令和4年度 第1回地域ITS研究会
日 時:令和4年10月14日(金) 14:00~17:00
場 所:TKP札幌駅カンファレンスセンターおよびオンライン(ZOOMによる配信)

 

講演1
ドライブレコーダーにおけるデータ活用の可能性
白石 春樹 様(株式会社デンソーテン コネクティッド事業本部 システム技術部 課長)

「ドライブレコーダーにおけるデータ活用の可能性」と題して、業務用ドライブレコーダー(通信型ドライブレコーダー)の機能紹介、実証実験の事例紹介、今後のデータ活用案についてご講演いただきました。その概要を以下に記します。

業務用ドライブレコーダーは一般的なドライブレコーダーには無い通信機能を有し、運転時の画像が自動的にサーバーに保存されます。デンソーテン社のドライブレコーダーの特長の1つとして、データを自動保存するだけでなく、AIに基づくヒヤリハット検知により、事故につながりうる急発進や急ブレーキ時の画像を詳細に解析する機能がある点が挙げられます。解析データに基づき、各ドライバーの癖(運転時間帯別の車速や車間、違反発生状況)を把握することで、運行管理や安全運転教育に役立てられているとのことでした。また、車内カメラの映像により、居眠り運転や脇見運転、片手運転(スマホ操作)の検知もできるとのことでした。運行管理側からは各車のリアルタイムな運転状況を把握することができ、また、運転日報の自動作成による業務時間の短縮にも役立てられているそうです。なお、このシステムは2005年にタクシー事業者向けから始まり、現在では白ナンバーの営業車など、様々な業種に展開されています。

ご講演では、業務用ドライブレコーダーデータが運転挙動の把握以外にも多くのことに活用可能であることが紹介されました。例えば、舗装状況の自動検知(ひび割れや段差、ポットホールなど)による道路維持管理への活用、レンタカーへの搭載による運転挙動データ(特に、外国人や土地勘のない観光客ドライバー)に基づく危険箇所の把握や新たな観光資源の発掘、事故時の衝撃データに基づく事故発生直後の状況確認、事故発生場所の早期特定による事故処置の効率化などが挙げられました。

発表後の質疑応答では、悪天候時のデータ精度に関する質問や一般車への搭載可能性についての質問があり、活発な議論がなされました。


講演の模様

質疑応答
 
講演2
地方部におけるオンデマンド交通サービス
寒竹 聖一 様(WILLER株式会社 執行役員)

「地方部におけるオンデマンド交通サービス」と題して、WILLERグループが取り組んでいる地方部におけるオンデマンド交通サービスについて、実例を踏まえつつ、ご講演いただきました。

最初に、WILLERの事業紹介と提供するモビリティサービスの紹介がありました。デジタルマーケティングによってお客様のニーズを反映し、それに対するお客様の声をダイレクトに掴んでサービスをアップデートしたり新たな価値を創造することにより、移動にイノベーションを起こしているとの話がありました。また、ASEANでテクノロジーを活用した新たなモビリティサービスの実証実験を先に行いその技術を日本に持ってくる、またはその逆もあり、ワールドワイドで自分達のアイデアを実現されているとのことでした。

次いで、移動を通じて世の中の課題が解決できないかということで、課題解決するものの一つがMaaSであるとのことで、既存の交通を繋ぐだけでなくオンデマンド交通を導入しシームレスな社会交通システムをつくることにより、過度なマイカー依存から脱却し、モーダルチェンジを起こしていきたいと思っているということです。

その上で、AIオンデマンド交通mobiの三重県明和町での顧客インサイトを把握する取り組みなどのニュース映像のほか、大阪市(大都市)、京丹後市(地方都市)や室蘭市(中山間地域)での取組事例のご紹介がありました。オンデマンド交通により子育て世代の送り迎えの負担が減る、高齢者の買い物機会が増えるなど、行動変容が起きたり、利用者の外出機会を増やすことができることがアンケート結果にも出ているとのことです。

課題解決の為に何がいいのかということに対してプロトタイプを作り、移動データやアンケート結果によってアップデートしていく。加えて、取組を進めながら、ステークホルダーを増やしているとうことで、具体的な例として京丹後市でのホテルやクリニックなどを挙げていました。

このようにマーケティングをしていきながら、ステークホルダーを増やし、まちの皆さんのための交通をまちの皆さんと創っていくことにより、外出の機会が増え、公共交通の利用も増えていくことで、モーダルチェンジが起こせるのではないかとのことでした。

最後に、実証実験をやっていきながら精度を上げて、最終的には公共交通自体の変革、マイカーをもつ人と持たない人の移動の格差をなくしていきたいと思っているという話でご講演は終了しました。

発表後の質疑応答では、WILLERによるオンデマンド交通サービスの利用料金などについての質問があり、活発な議論がなされました。


講演の模様
 
講演3
都市最適化マネジメントの実現に向けた人流統計データ「全国うごき統計」の開発とその活用
金木 大輔 様(パシフィックコンサルタンツ株式会社 デジタルサービス事業本部 DX事業推進部 DX事業推進室 室長)

「都市最適化マネジメントの実現に向けた人流統計データ「全国うごき統計」の開発とその活用」と題して、目指すべき都市最適化マネジメントのあり方と人流統計データ「全国うごき統計」の開発から活用事例等についてご講演をいただきました。

複雑化している社会課題に対し、現状は道路インフラや鉄道インフラ等個別に対応していましたが、今後は都市全体で課題対応が必要になってきており、都市全体の動きをデータから捉え、都市本来の力を引き出すことを「都市最適化マネジメント」と呼んでいるのことです。

都市全体の動きを捉えるデータとして、人流データの活用が進んでいます。「全国うごき統計」は2017年2月にパシフィックコンサルタンツ株式会社とSoftBankが業務提携し、パシフィックコンサルタンツ株式会社の交通工学のノウハウとSoftBankの基地局データに基づき新たな人流統計データとして開発されたものです。しくみとしては、基地局から得られる位置情報を活用して、人の移動・滞在情報を統計加工し、人流統計データとして提供しているとのことです。

「全国うごき統計」の特長として、「①網羅性」、「②機能性」、「③信頼性」があげられ、特に「②機能性」の部分では、これまでの人流データにはなかった、移動経路や交通手段が把握できることが大きな強みであるとのことです。

具体な活用事例として、高速道路会社における新規IC整備効果の検討や自治体における公共交通基本計画の検討(バスの潜在需要の把握)、観光施設の来場者分析によるプロモーション検討等、多岐にわたる活用事例が紹介されました。身近なところでは「駅利用圏ポテンシャルマップ」という駅利用圏や最短距離圏域等が地図上でわかるサービスも展開しています。

国の公表資料への掲載や2021年の建設技術展にて、「注目技術賞 優秀賞」を受賞するなど高い評価を受けており、今後はさまざまなデータとの連携によりさらなる都市課題の解決に向けて、行政・事業者・利用者視点などさまざまな分野・カテゴリに貢献し、"移動したくなる社会"を目指しているとのことです。

質疑応答では、リアルタイム性や北海道の郊外部での信頼性、統計単位、パーソントリップ調査に関する代替性などの質問があり、活発な議論がなされました。


講演の模様

質疑応答