活動記事
「NTTデータのインフラ維持管理や防災に関する取り組み」と題して、防災やインフラ分野におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)についてご講演いただきました。 講演の中では、ドローンを利用した防災システムについて、愛媛県で行った事例と北海道で行った事例の二事例を紹介いただきました。
愛媛県の事例では、伊方発電所の原子力防災活動にドローンを活用している事例が紹介されました。この事例では、ドローンの飛行ルートの策定を行っているとのことです。特に、ドローンから災害対策本部までの電波中継の仕組みや、複数ドローンの運航管理を検討していくとのことです。
北海道の事例では、国土交通省北海道開発局と共同で実施したパイロットプロジェクトでドローンを使用した事例が紹介されました。河川点検時に広域ドローンによって水平解像度10mでのデータ収集が可能であることを実証したとのことです。今後、地図情報やGIS、3次元地図情報とドローンによって収集したデータを組み合わせたデジタルツイン技術による人的労力の削減に貢献することが考えられます。
加えて、以下の3トピックについてもご紹介いただきました 。
質疑応答では、ドローンの長距離飛行における課題解決や、複数台のドローンによる警備の実現可能性について意見交換が行われました。
「道路維持管理のDX化を支えるシステムと札幌市の取組み」と題して、札幌市で取り組みが開始された、スマートフォンやドライブレコーダーを活用した「道路パトロール支援サービス」についてご講演いただきました。
2012年に発生した笹子トンネル天井板落下事故により、道路をはじめとしたインフラの維持管理が社会問題としてクローズアップされました。これがきっかけとなり、道路のうち橋梁・トンネルについては道路管理者による定期点検が法制化され、舗装については国主導で舗装点検要領が刷新されるなど、維持管理に対する見直しが図られました。
しかし、道路管理者である自治体職員の減少、特に土木系職員の減少幅は大きく、さらに予算不足等の課題があったことから、産学官により点検手法が検討されました。
そこで道路舗装の維持管理の省力化を目的に、新技術による点検・業務効率化ツールとして「道路パトロール支援サービス」が開始されたとのことです。
「道路パトロール支援サービス」の主な機能は、以下3点です。
これらの情報をクラウドで一元管理することで、点検作業の効率化・コスト削減のみならず、関係者間のコミュニケーション強化、予防保全等の更なるデータ利活用が可能となっています。
これまで舗装の点検は目視や専用機械で行われてきたことから、当初はスマホやドラレコで舗装診断ができるのかと懐疑的な声もあったそうですが、社会全体のDX化や道路管理者の意識の高まりにより普及が進んできているとのことです。
札幌市でもこのシステムを導入し、令和6年9月より試行運用、同年10月より本格運用が開始され、札幌市が管理する約5,600kmの道路の路面点検が現在進められています。
質疑応答では、凍結路面の診断ツールとしての可能性、ポットホールの検知や樹木の剪定、白線のかすれ等の映像検出の可能性等についてなどの意見交換がなされ、活発な質疑応答が行われました。
講演概要
「地域社会に貢献する人工知能技術の展望」と題して、以下の3つの視点から最新の取組および研究成果を交えご講演いただきました。
1. 除雪出動決定支援システム
人工知能技術を適用した「除雪出動決定支援システム」についてご紹介いただきました。このシステムは除雪出動を効果的にサポートするもので、具体的には天候情報のほか定点カメラや気象センサーによる積雪状況、過去の除雪履歴などを基に除雪作業の最適なタイミングをリアルタイムに評価判断するものです。
システムの目的は除雪担当者が「除雪に行くべきかどうか」の判断を支援することで、特に除雪作業員への出動連絡の誤り(行かないと言っていたが結局行くことになるなど)による心理的負担を軽減することに重点を置いているとのことです。
このシステムは留萌市を対象に実際に導入され、作業員や管理者の負担軽減に役立ったという評価が得られるとともに、出動判断に関してはデータを基にした正確な判断が可能になり除雪作業の効率化が進んでいるとのことです。
2. 自治体におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の導入事例
AI技術を活用した公共サービスの改善に向けた取組みとして、香川県三豊市で実施されたゴミ出し案内の自動化システムが紹介されました。
三豊市ではゴミ出しの案内をAIに任せるという実験を行い、初期段階でのAIの回答正答率は約62.5%だったが、最終的には94.1%まで向上しました。しかし正答率99%という導入基準をクリアできなかったため導入は見送られた事例です。
この事例から学べることとして、AI技術の導入には過度な期待を避けるべきであり、現実的な目標を設定しながら、ヒューマンインザループの考え方を取り入れた運用が重要であるとのことです。また公共サービスにおけるAIの利用は、正答率だけでなく、職員や市民の負担軽減に焦点を当てた評価が重要とのことです。
3. 自治体におけるDXの理想像の提示
自治体のDXの理想像について、AI技術を使った自治体業務の効率化と、それが市民生活をどのように改善できるかについてのビジョンをお話いただきました。
理想的なDXとして、例えば道路使用許可や占有許可のような手続きがすべて電子化され、クラウド上で自動的に処理される未来を描いています。これにより手続きにかかる時間が大幅に短縮され、市民や職員の負担が大きく軽減されると考えられます。
さらにAIエージェント化が進展することで、申請作業の自動化やデータの蓄積を活用した予測分析が可能になり、将来的には自治体業務が非常に効率的に行われることが期待されるとのことです。
AIを導入する際の課題としては、技術的な成熟度だけでなく、法的整備や組織の適応力が求められることが指摘されました。特にAIによる自動化が進む中で、人の関与をどのように残していくかが重要な論点になるとのことです。
質疑応答では、AI活用を行う上での法的整備や運用面の課題や、AI予測に含まれるリスクへの対応について意見交換が行われました。